コードレス衣類スチーマーTAS-MX6
易 佳
出かける前などに気軽に使えるコードレス衣類スチーマーです。アイロンとスチーマーの一番の違いは使うシーンです。アイロンは水平のアイロン台で操作しますが、スチーマーは垂直、斜めなどさまざまな角度・方向で操作します。スチーマーのデザインのポイントはここにあると考えてスタートしました。
使いやすさと疲れにくさを追求したデザイン
空中で操作するスチーマーは、様々な角度で使うことで手に本体の重量がかかり、手首への負担も大きく、アイロンよりも圧倒的に疲れやすいです。さらに落下させる不安もあります。
使いやすさと疲れにくさ、コンパクトでどんな角度でも操作しやすい形状を突き詰めていって、シンメトリーデザインが理想的な形ではないかという発想にいきつきました。ハンドルの基本の形が前後も両サイドも対称で、利き手を問わず、どんな位置でもっても自由自在で、握りやすく使いやすいです。
使いやすさを追求しミリ単位でサイズを調整
シンメトリーデザインというコンセプトのもと、ハンドルを中心に本体全体の形状について詳細に検討しました。持ち手のところがカットされているタイプをオープンハンドルといい、カットされていないタイプはクローズドハンドルといって市場では両方が存在します。クローズドハンドルは手が抜けないため、どんな角度で持っても落としづらい特徴があります。今回はクローズドでシンメトリックなハンドルデザインとしました。ラウンドした形で下側の力を支えるように設計しているので、持ちやすく疲れにくくなっています。
また、従来品や他社品の使いやすさを調査してサイズをミリ単位で調整し、できるだけ低めにコンパクトな本体サイズを目指しました。その結果、従来品*から10ミリ程度、高さが低減されたデザインとなり、より使いやすいサイズにすることができました。
さらにハンドルの形状だけではなく、ハンドルの内側に付ける滑り止めについても試作品を体感してもらい試行錯誤を重ね、ベストな高さや長さをブラッシュアップしていきました。滑り止めの長さは少し短くして指がフリーになる部分をあえて作って疲れにくくしています。
* 2021年発売 TAS-X6との比較
デザインをうまく利用した水位窓
水を利用する製品なので水の残量を確認しやすくすることも課題の一つです。従来のスチーマーは小さな窓で確認する方法でしたが、今回はクローズドハンドルのため、それをうまく利用してハンドル部にオーバル形状の水位窓を設けるという発想に至りました。その結果、よりシンメトリーデザインを印象づけるハンドルになりました。
こだわり抜いた仕上げ
プロダクトデザインにとって最終の仕上げは、マラソンで例えると最後の1マイルです。よりよいデザインをお客様に届けるために最終の仕上げを拘りました。今回、樹脂の仕上げの出来映えが最大の難関となりました。インテリアに馴染むマット加工を仕上げとして採用したのですが、金型から転写する際にどうしてもムラが出てしまいました。材料や温度と圧力の条件を変えたり、構造を改善したりと、製造担当や技術担当とチャレンジを繰り返し、このデザインを実現しました。
DESIGNER担当デザイナー
易 佳
中国と日本で、電動工具やロボット家電、アプリなど様々なデザイン業務を経て、2020年に東芝ライフスタイルに入社をしました。現在は、冷蔵庫、衣類スチーマー、洗濯機などのプロダクトデザインを担当しています。家電のデザインとは、形、色、質感などを通じて、ユーザーの暮らしをより良くする体験を提供する仕事と考えています。快適な体験、わくわくする体験、生活に役立つ体験などユーザーが求める体験を理解しつつ、自分自身が体験を創出することを楽しみながら日々デザインをしています。